泣く子が黙り、飛んでいる鳥が落ちてくる内田さんの仕事場は案の定、
土俵のように気力漲る場所だった。見回せば大壺がいくつも蹲踞の姿勢で控えている。
ここは奇襲で行くしか勝ち目はなさそうだ。包丁でザクザク切り込むか、
ひっくり返して壷の底を台座に見立て、ゴリアテの巨大な頭部を乗せようか。
しかし相手は内田さんの拵えた正々堂々の大壺なのである。四ツ相撲を望むのなら、
こちらも正面から絵をもって向うべきだろう。
一寸の虫にも五分の武士道。私はやおら雄叫びを上げると一心不乱に刷毛をふるった。
やがて息も尽き、仕事場の暗い隅にひそんでいると、ひとりの御婦人が現われ、
まっすぐに壷に向った。私は逆光のその顔に、当惑と、疑念と、困惑と、惑乱を認めた。
それからエクスタシーもわずかに認め、少しは相撲になったかな、と、ゆがんだ髷を直した。
望月通陽